それから音が聞こえなくなった。
フィルターを掛けたみたいに、全ての音が遠く感じる。
ああわたし、今バケツの中に顔を突っ込まされているんだ。
……誰も助けてくれない。
こんなやつらに期待なんてしていないけど。
急に音がはっきりしたと思ったら、目の前にエリの顔があった。
化粧で整えた顔はそれはそれは綺麗だった。
「馬鹿じゃないの、死ね」
再び、ザブン、と波に飲まれる。
それから背中に冷たいものを感じる。
「あーあ、掃除、よろしく」
くぐもってそんな音が聞こえた。
何も考えられず、馬鹿みたいに頭をバケツに突っ込んでいた。
「……っは……がはっ……あ……」
「馬鹿じゃん、あいつ」
「ずっと頭突っ込んでるなんてうける」
「げほっげほっ……はぁ……」
全身びしょ濡れになってしまった。
スカートからブレザー、靴下なんてもちろん履きたくない。