「え?」
改札を抜け、ロータリーを回って住宅街に出る。
「夏穂さんの声、最初はなんだか暗かったから。
嫌なことは溜めない方がいいのよ。
そのうち、泣けなくなってしまう」
「……涙って、出なくなるんですか?」
「ずっと抑えていると、そのうち心が麻痺するの……」
まるで、ホノカさんが経験したことのあるような言い方だ。
「……ホノカさんは、泣けないんですか?」
「泣けるわ。今だって、ほら」
すん、と電話の向こうで鼻をすするのが分かる。
「ね?」
「我慢、しないようにします」
「そうね。
でも、あなたは笑っている方がきっとかわいいと思うの。
人を惹きつける笑顔なんだろうなあ」
大輪の花を咲かせるような暖かい笑い声が伝わってくる。
「会ってみたいですね。
それで、お互いの顔を見たいです」
「……そうね」