「よろしく、夏穂さん」
よく知っている気がした。
この不思議な感覚をなんと言えばいいのだろう。
既視感、とでも言うのだろうか。
不思議に思いながらちょうどやって来た電車に乗る。
「あなたは、なんて言うんですか?」
「わたしはホノカ」
「いい名前ですね。
……ホノカさん、でいいですか?」
「もちろん。夏穂さんの好きなように呼んでくれたら嬉しい」
「……この電話って、どこから掛けているんですか?」
昨日の疑問を投げかけてみる。
答えが分かっていても、何となくホノカさんがどう答えるのかが気になった。
「この電話?」
「そうです。
海外から掛けているんですか?
だから昨日、あんなふうに時間のことを聞いたんですよね?」
「……そういう訳とは、ちょっと違うかな。
大きくなったら分かると思うな」
小鳥がさえずるように軽やかに笑って話題が変わった。