「あ、はい。

……じゃあまた」



電話を切ると、疲れがどっと出た。



二、三日分一気に喋って喉がカラカラだ。



歩きながら、さっきの会話を思い出すとすごくおかしな会話だったと思う。



普通、電話なんて「いつ」なんて誰も聞かない。



「今」に決まっているのに。



……もしかしたら。



もしかしたら、あの人は外国にいるのかもしれない。



だからあんな変なことを聞いたんだ。



それなら納得がいく。



「どこ」という質問も辻褄が合う。



ひとつ得をしたような気分で玄関のドアを開ける。



……また誰もいない。



お母さんも、お父さんも、わたしが中学生になったあたりから毎日仕事で家を空けることが増えた。



何日かに一度帰ってくればいいほうだけれど、二週間くらい戻ってこないことなんてよくある。



電気を一つずつパチパチつけて自分の部屋に行く。



まるで家に命を灯していくようだった。