「手も大きいし足だって大きいからまだまだ伸びるよ。見てろ?あの頃の俺とは違うってところ見せてやる。」

得意げに、それでいて挑発的に笑う姿は今までに見たことない柚木だ。

恥ずかしくなって引こうとした手を握られ花澤は更に困惑した。

「力だってもう負けないと思うよ?」

「ゆ…。」

「いつか花澤さんの事、小さくて可愛いって言ってやるからな!」

それはなんて破壊力の強い言葉だろう。

恥ずかしくてくすぐったくて、腰が砕けそうな言葉に花澤は涙目になりそうだった。

顔が熱い。

「花澤さん?」

「が、頑張ってね!」

「どうした?顔が赤い…。」

「さ、早く帰ろう!」

少し強引に手を振りほどいて花澤は歩き出した。

心臓が痛いくらいにドクドク鳴っているのが分かる。

「足痛めてるんだから急いじゃ駄目だって!」

その言葉に思わず足を止めて振り返る。

「なんで…知ってるの?」

少し情けない声を出してしまった事に花澤は気付いていないだろう。

滅多に見ない花澤の姿、柚木は思わず笑ってしまうと数歩進んで近付いた。

「ちょっと引きずってる。」

言い当てられて花澤は思わず俯いてしまう。

何か言い返したいのだろうが上手く言葉が出なくて口を開けては食いしばっている。

「花澤さんて可愛いなあ。」

笑いながら放った言葉と笑顔がどれだけの破壊力があるのか分かっていないのだろう。

それを今やられるとどうしようもなくなる。

「柚木くん…っ!それは殺し文句だよ!」

そうやって抵抗するのが精一杯だった。

いや抵抗にさえなっていない気がする。

「…え?」

顔を真っ赤にして睨んでくる花澤の気持ちを知ってか知らずか。

柚木も顔を真っ赤にして二人は大雨の中暫く見つめ合ったのだった。



***ハナとユズ***