男の人が一人、入ってくる。
とてもダサいTシャツを着て。
その人は私をじっと見つめると、
しばらくそのまま立ち尽くしていて、
それから私に笑いかけてきた。
「波留」
その声を、私はなんとなくだけれど覚えている。
懐かしくて、落ち着きのあるその声。
きっと私は、間違えることはないだろう。
だって、全部心が覚えている。
勘で分かってしまうもの。
だから私は、何度だって繰り返す。
何度も、何度も、出会う度に繰り返す。
「初めまして、尚央」
初めまして、私の大好きな人。
完
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…