男の人が一人、入ってくる。


とてもダサいTシャツを着て。


その人は私をじっと見つめると、
しばらくそのまま立ち尽くしていて、
それから私に笑いかけてきた。







「波留」









その声を、私はなんとなくだけれど覚えている。


懐かしくて、落ち着きのあるその声。


きっと私は、間違えることはないだろう。


だって、全部心が覚えている。


勘で分かってしまうもの。


だから私は、何度だって繰り返す。


何度も、何度も、出会う度に繰り返す。






「初めまして、尚央」












初めまして、私の大好きな人。