私は、一昨日の私はなんて酷い仕打ちをしたんだろう。


話も聞かずに一歩的に尚央を責めて、
挙句の果てに叩いてしまったなんて。


「尚央、本当に私のこと……」


「何度でも言うよ。お前のことが好きだ。
 その気持ちは、本物なんだ」



私は、尚央の右頬にそっと触れた。


絆創膏が貼られた頬に触れると、
ぶわっと何かが込み上げてくる。


震える手で、そっと頬を撫でた。


「ごめんなさい。私、知らなくて……。
 ごめんなさい。ごめんなさい、尚央」


「いいんだよ。俺が悪いんだ。
 もっと早くにお前に病気のことを告げていれば、
 誤解は生まれなかったはずなんだ。いいんだ、波留」


尚央は私の手を握って、それから私の頭を撫でた。


「一つだけ、もう一度聞かせてくれ。
 波留、俺が好きか?」


私の答えは一つ。
だって、私だって尚央のことが……。







私は大きく頷いた。


すると尚央は嬉しそうに笑って私を抱きしめた。


パソコンがゴトンと音を立てて地面に転がる。


それでも気にせず、尚央は私を強く抱きしめた。


「俺、お前の彼氏だろ。絶対にお前を幸せにする。
 病気だって一緒に乗り越えていこう。
 いつか病気が治っても、治らなくても、
 それでもずっとお前が好きだ」


「私も……尚央が、す……」


私が言うより先に、尚央は私にキスをくれた。


軽いキスをされたと思ったら、今度は深く、熱い口づけを。



「馬鹿。こういう時は鼻で息をするんだよ」


「で、でもっ」


「子供だなぁ、波留は」


ははっと尚央が笑う。


恥ずかしくて顔をそらすと、
尚央が私の顎に手を添えてもう一度キスをした。


幸せな、幸せなキスだった。


涙がポロリとこぼれた。


それくらい、幸せだった。