「尚央……」


ポツリと呟いて分かった。


私は、尚央に会いたいんだ。


一昨日の日記も昨日の日記も、
尚央については散々に書かれていたけれど、
私、本当は尚央に会いたくてたまらないんじゃないのかな。


そう思った頃には部屋を飛び出していて、私は施設を出た。
 

ノートを見ながら走る。
手にはノートとプレイヤーを持っていた。


尚央に会ったら、何を言おう。

あなたは確かに、私を傷つけたけれど、
それ以上に、あなたは私に愛をくれたのではないのか。


それを問いたかった。


早く会わなければ。
そうして仲直りして、今度こそ幸せに……。





喫茶店にたどり着いて、カランコロンと音を立てた。


中から男の人が出てくる。
雅文かな。雅文は目を丸くして私を見ていた。


私は店内をぐるりと見渡して、息を整えた。


日記のメモに該当しそうな人はいない。


「おい、どうした?そんな焦って」


「尚央、来なかった?」


「あのおっさんなら来てないぞ。
 なんだ?お前あのおっさんと仲直りしたんか?」


「ごめん、また後で!」


「あっ、おい、ちょっと……」