*
朝が来た。
いつも通りの朝が。
そう思っていた。さっきまでは。
青いノート「MEMORe:」を読んで頭が真っ白になった。
まさかこんなことが起こるなんてあり得るのかな。
全部夢であってほしくて頬をつねってみたけれど、
余裕で痛かった。
前向性健忘。
その病気を朝からパソコンで調べてみると、
絶望すら感じられた。
治療法は無く、ただメモを取って補うしかないという
事実を突きつけられて、頭を抱えた。
嘘でしょう。
どうして私がそんな病気にならないといけないの。
施設長というおじさんに話を聞いて、更に絶望した。
いよいよ本当の話になってきて、
信じざるを得なくなってきた。
このおじさんの言うことは間違いないのだろう。
現にこの施設「カリタ」では親のいない子どもたちが
みんなで一緒に生活しているし、
おじさんは私の日記のことも全部知っていた。
何より、このおじさんが嘘をつくとは到底思えなかった。
だってこの人、善人だと思う。
眼鏡の奥の眸が、
とてもまっさらで澄んでいるんだもの。