「雅文、手……」


「……ああ、悪い」


ぱっと手を離して、雅文は腰に手を当てて空を仰いだ。


何だったんだろう。


真剣な雅文の熱にやられて思考が停止する。


温かい手の感触がまだ残っていた。


「しりとりでもするか」


「えっ?」


突然のことに素っ頓狂な声を上げる。


その時胸がドクンと鳴った。


何だろう、この感覚は。


雅文を見ると耳が少し赤くなっていた。


「りんご」


「ご、ごりら」


「ごりらってお前なぁ。
 もう少しかわいい感じでこれないのかよ」


「いいでしょ。うるさいなぁ。ら!」


「らっぱ」


「ぱんだ」


「だんす」


「すずり」


「りか」


「かり」


「り?りー、りー、りす」


「すり」


「またぁ?」


雅文は「り」ばっかりで攻めてくる。


それが何故か懐かしく思えた。


なんだろう。
この胸の辺りがチクチクする感覚。


ただのしりとりなのに、
こんなにも心が動かされるのはどうしてなんだろう。


雅文としりとりを続けているとなんだか泣きそうで、
きゅっと手を握りしめながら私は歩いた。