ショコラミントを飲み終えた頃、
カランコロンと音がした。
びくりと肩を震わせる。
音のした方を見ると、そこには
サラリーマン風のおじさんが立っていた。
尚央じゃなかった……。
尚央かと思ってびびったけれど、
そうじゃなかったことに安心する。
やっぱりここは早く出ないと。
「じゃ、じゃあ私はこれで……」
「なんだよ、もう帰るのか?
真理愛と話するんじゃなかったのかよ」
「う、うん。また今度。
今度はもっと早くか遅くにくるから。
今日はこれで帰るから」
私が立ち上がると、接客をしていた真理愛さんが
私のところにやってきた。
「あら、帰るの?今来たばかりなのに」
「ちょっと、尚央に会いたくなくて」
そう言うと、真理愛さんは、ははぁと頷いた。
「そう。じゃあまたの機会にね。
雅文、ここはいいから送ってやって」
「なんで俺が!」
「女の子を送ることは男の務めでしょ。
給料減らすわよ?」
「うっ……」
「真理愛さん、私一人で大丈夫ですよ」
私が慌ててそう言うと、真理愛さんは首を振った。
「送らせて。何かあったら困るから」
何も言えなくて苦笑いをしていると、
雅文がエプロンを外して近づいてきた。
「ほら、金払ったらとっとと行くぞ」
「ちょっと待ってよ。優しくないなぁ」
「誰が優しくするか」
「雅文!」
お会計を済ませて店を出ると、
真理愛さんが見送ってくれた。
彼女に手を振って来た道を戻る。
隣を雅文が黙ってついてきた。なんだか気まずい。