「飲んでみる?」
「飲むかよ。接客中に」
「あ、そうか」
「馬鹿かよ」
「うるさいな」
雅文が辺りをきょろきょろ窺っている。
何をしているのかと思ったら、急に私の頭を小突いた。
「痛い!なにすんのよ」
「うるせぇ。お前なんかむかつくんだよ」
「何それ。そっちこそむかつくのよ」
「あんだと。喧嘩売ったな?」
雅文が手をポキポキ鳴らして近づく。
殴られると思って目を閉じると、
「痛ぇ!」と雅文の声がした。
「こら、雅文。女の子いじめようとしちゃだめでしょ」
「真理愛さん!」
「いつの間に……わざとかよこのタイミングは」
「何?なんか言った?波留ちゃん、お待たせしたわね。
こんにちは」
真理愛さんは私に向けてにこりと笑う。
私も笑い返してショコラミントを飲んだ。
すると雅文がべぇっと舌を出してきた。
「なによ」
「えっ?雅文、あんたなんかしたの?」
「何もしてねぇよ」
「嘘、今舌を出したじゃない!」
「雅文~」
真理愛さんに小突かれて、雅文は大人しくなった。
なんだか、雅文とこうしてじゃれるのもいいかもしれない。
昨日の私もこんな風だったのかな。
この人たちは信頼してもいい人たちかも。
だってこんなにも素の自分でいられるもの。