それでも私は喫茶店「ヴァポーレ」に行くことにした。


尚央には会いたくないけれど、
真理愛さんって人に会いたいと思った。


昨日はお世話になったみたいだし、
お礼も兼ねて顔を出してもいいかなと思った。



急いで支度をして施設を出る。


ノートに書いてある目印を目指して私は歩いた。



「ヴァポーレ」はすぐに見つかった。
お洒落なお店だった。


カランコロンと音を立てて扉が開く。


すると男の店員さんが出てきた。


店員さんは私を見ると苦い顔をした。


もしかしてこの目つきの悪い男、雅文?


「あの、こんにちは」


「……おう」


雅文だ。
つり眉たれ目の彼は気怠そうな目をして私を見ている。


「雅文?」


「なんだよ」


やっぱり雅文だった。
なんだ、結構かっこいいじゃん。


十九歳か、なるほど。
目つきや態度の悪さがなければ悪くないかも。


「真理愛さん、いる?」


「いるけど」


「ちょっと会いに来たの。今って忙しい?」


「見れば分かんだろ」


むっ……。
日記にも書いてあったけど、
ここまで不愛想だとは思わなかった。


なんだか腹が立つな。
でも、憎めないのはなんでだろう。


私は奥を覗いてみた。
奥の方で真理愛さんらしき女の店員さんが
お客さんと話をしている。


お店は混んでなくて、話をしている一人の男性客と
二人組のおば様の二組しかいなかった。


「座ってれば?なんか頼んでいけよ」


「うん。そうする」