彼の話によると、コルドニエの親子は、帰ろうとしているところであったらしい。

やけに嬉しそうな顔をして、『セシリア様のおかげで……』と大きな声で会話していたため、気になったクロードは馬を下り、彼らを呼び止めた。

そして、なにがあったのかを全て聞いたそうだ。


ちなみに、セシリアが意地悪な作り直しを何度も命じていたことも、彼は知っていた。

セシリアと面会した後の靴屋の主人が、困り顔をして帰っていく姿を、これまでに数回、目撃したことがあるのだという。

応接室前の廊下を通りかかったら、厳しく注文をつけるセシリアの声が微かに漏れていて、それを耳にしたこともあるのだとか。


普段のセシリアなら、たとえ気に入らないデザインの靴を持ってこられたとしても、せっかく作ってくれたのだからと、お礼を言って買い取ることだろう。

怒ることは決してない。

セシリアがそういう性格であるとクロードは知っているので、これはなにか考えがあっての厳しい対応なのだろうと思ったそうだ。

そして彼はセシリアを信じ、静観していたらしい。


涼しげな瞳を細め、セシリアに尊敬の眼差しを向ける彼は、話を続ける。