晩餐室は南棟の二階にあり、広々として豪華絢爛な設えである。

十二人掛けの長テーブルに着席しているのは、三人のみ。

王妃とセシリア、十四歳になる弟のエドワードである。

国王は、有識者を集めての緊急会議とやらで、今日の晩餐には同席できないらしい。


セシリアの向かいの席は王妃で、その隣にエドワードが座っている。

王太子の地位にあるエドワードは、幼い頃から英才教育を施され、姉の目から見ても優秀だ。

快活で朗らかな性格をして、顔立ちも整っている。人望も厚く、非の打ち所がない。

そんな弟に、優雅にカトラリーを操る母親が、穏やかな口調で話しかけていた。


「今日は兵士の訓練場にいたそうね。剣の稽古をしていたの?」

「そうです。今日はクロード騎士団長が相手をしてくれましてーー」


エドワードの話によれば、要人の護衛や警備、犯罪捜査などで出かけることの多い騎士団長が、最近は城内にいる時間が増えたと聞いて、手ほどきをお願いしたらしい。

これまで彼は他の騎士に相手をしてもらうことが多く、少しは上達した気になっていたそうだが、クロードと対戦してみて、まだまだ実力不足であると気づいたようだ。


「どうやら僕は思い上がっていたようです。騎士団長は遥かに強い。幼子のように翻弄されてしまいました」

「まぁ、そうなの。自分が未熟であると気づけたことは良かったわ。クロードのおかげね」