いつもなら『喧嘩はやめて!』と仲裁に入るところだが、思い悩んでいるセシリアの口から漏れるのはため息のみ。

「ああ、時間だわ。行ってきます」と立ち上がり、ネックレスをつけずにドアへ向かう。

引いて開けるドアを押し、「開かないわ。なぜかしら……」と呟いており、それを見ている侍女ふたりは、どうやら喧嘩している場合ではないと感じた様子であった。

セシリアの後ろで双子が、ヒソヒソと相談している。


「ねぇツルリー、あれは恋煩いの症状? 放っておいたらどうなるの?」

「夢遊病になるかもしれないわ。騎士団長を求めて、夜な夜な城内を彷徨うのよ。お化けみたいに」

「それは一大事。ここは私たちがひと肌脱ぐべきだと思うわ」

「そうね、カメリー。セシリア様のためなら、ひと肌でもふた肌でも、全裸になっても構わない」


その会話が耳に入っていても、頭まで到達しないセシリアは、やっとのことでドアを開けて廊下に出る。

そしてぼんやりとした足取りで、晩餐室へと向かうのであった。