不思議そうに首を傾げたクロードの前髪が、サラサラと流れて、額の古傷を露わにする。

それを目にしたセシリアは、胸が焦がれると同時に、純粋な恋心に苛まれた。


(ああ、悪い娘になりたいなんて、クロードさんには言えないわ。嫌われたくないもの……)


ペコリと会釈をした彼女は、潤む瞳を見られまいとして走りだす。

しかし、「足元にお気をつけて!」と心配する彼の注意を聞いた直後に、小石につまづいてしまった。

なすすべなく、前のめりにバッタリと倒れた彼女は、ぶつけた膝よりも、込み上げる恥ずかしさで胸が痛い。


「セシリア様!」


慌てて駆け寄るクロードの足音を聞きながら、今日はなにをやっても駄目だと、自分を情けなく思うセシリアであった。