その言葉に「えっ!?」と彼に向き直った彼女は、「お父様に報告するんですか?」と問いかけた。

そんなことをされては、人助けの課題をひとつクリアしたことにされてしまい、彼女にとっては望まぬ事態である。

明らかにうろたえるセシリアに、クロードは目を瞬かせ、不思議そうに尋ねる。


「もちろんです。この任務は、護衛と報告役を兼ねておりますので。なにか不都合が……?」

「い、いえ、なんでもないんです。気にしないでください」


胸の前で両手を振り、慌ててごまかした彼女は、これ以上、会話を続けることに難しさを感じていた。

それで逃げ出すべく、スカートをつまんで軽く腰を落とし、作り笑顔でクロードに挨拶をする。


「カメリーに叱られそうなので、わたくしはこれで失礼いたします」


彼と馬場に背を向けて足早に歩き出したセシリアであったが、数歩進んで立ち止まると、肩越しに振り向いて声をかけた。


「あの、できれば、今後の見守りはーー」


見張られていると次の悪事を企みにくいので、やめてほしい……その思いを伝えたかったのに、彼に知られたくない事情でもあるため、途中で口を閉ざす。