審査員とのやり取りや、ひれ伏したジャルダンが涙ながらに事情を話した場面まで、全てを見聞していたという彼は、ニコリと微笑んでセシリアを讃える。


「清廉なるセシリア様が、悪事を働くことはあり得ませんでした。誰かの幸せのためにと考え、行動されるあなたは、ご立派な淑女です。庭づくりの知識にも長けていらっしゃるとは、感服いたしました」

「ええと、その……ありがとうございます」


後ろめたい思いから、目を合わせていられずに、セシリアは馬場を見る。

二十頭ほどの馬が同じ歩速で列をなし、長閑に歩いていても、彼女の心は平穏でいられない。


(本当のことを打ち明けられないわ。好きな人に悪く思われたくないもの。悪い娘だという噂をお父様の耳に届けなければいけないのに、クロードさんにはよく思われたいなんて、一体どうしたらいいのかしら……)


残念ながらセシリアの困惑は、クロードに伝わらないようである。

クスリと好意的な笑い声が隣に聞こえ、「あなたはいつも恥ずかしがり屋でいらっしゃる」と誤解された。

それから彼は、嬉しそうな声で続きを話す。


「この度のセシリア様のご活躍、国王陛下に奏上いたします。陛下もきっとお喜びになられることと思います」