彼女は国王夫妻の娘で、第二王女のセシリア・クリスティアーノ・カルディンブルクである。

胡桃色の髪に、サファイアの如き青い瞳は父譲りだが、面立ちは絶世の美女と評された王妃の若い頃によく似ている。

十七歳の結婚適齢期に入ったセシリアは、誰しもが振り向かずにいられないほどに美しい。


父の言葉に、「はい……」と、か細い返事をした彼女は、真横に立つ執事が抱える肖像画に目を向けた。

そして、「お父様、お母様の仰る通りの方とお見受けいたします……」と控えめな声で感想を述べ、その後は長い睫毛を伏せて、肖像画から視線を外した。

それは、彼女のささやかな抵抗である。


(この方が、どんなにご立派であっても、私はお嫁に行きたくないのに……)


サルセル王太子からセシリアのもとに、求婚状が届いたのは、二カ月ほど前のことである。

カナール王国は小国のため、カルディンブルク王国との強い結びつきがほしいのだと思われるが、白百合の花のように美しい、セシリアの噂が届いたためでもあると推測される。