(お母様が私の立場だとしたら、どうなさるかしら……)


そう考えながら自室へと歩き出したセシリアは、数歩進んで再び足を止めた。

ハッとしたように目を見開き、パチンと両手を合わせて顔を輝かせる。


(そうだわ! 悪さをすればいいのよ!)


彼女は名案をひらめいた心持ちでいた。

父親に三つの人助けをしなさいという課題を出されたが、逆に誰かの邪魔をして、迷惑をかけよう。

そうすれば、こんな娘では他国へ嫁がせることはできないと、破談にしてもらえるかもしれない。

憧れの母のような強い性格に、生まれ変わるチャンスでもある。


(そうよ、うじうじと悩んでいてもなにも変えられないわ。今、動かないと、きっと一生後悔する。クロードさんと離れたくないのなら、悪い娘にならなければ!)


両手を強く握りしめて、心の中で決意表明したセシリア。

娘がそのような思いで見ているとは、少しも気づかない王妃は、メイドへの説教を終えると、王族の居間へと入っていった。