幼い頃は、どうしたら母のようになれるのかと考え、人を罠にはめてみようと思い立って、いたずらに励んだ時もあった。

ある日は、メイドのエプロンにウサギの絵を描き、その翌日にはこっそりと執事のお尻に布製の猫の尻尾を貼り付け、また別の日には、家庭教師から出された宿題に、解答ではなく、一生懸命に考えたダジャレを書き連ね……。


幼い頃のセシリアは、誰かに迷惑をかけて、性格が母に似ていると言われてみたかった。

父親に、純粋な黒い心をしていると、笑って褒めてもらいたかった。

そう願ってのいたずらであったはずなのに、残念ながら周囲の反応は、彼女の期待とは違うもの。

『我々を楽しませてくださってありがとうございます!』と、皆に笑顔でお礼を言われてしまい、父にも、『こらこら、可愛いいたずら娘め。皆にちゃんと謝るんだよ』と優しく諭されただけであったのだ……。


それ以来セシリアは、自分はどう頑張っても、母のような強い性格にはなれないと、すっかり諦めて大人しく暮らしてきた。

しかし、今はまた……いや、子供の頃以上に、母に近づきたいという思いがムクムクと湧いてくる。