そこに、初老の王城医師と助手の青年が戻ってきて……。


『夜明けから四時間もかけて集めた薬草でしたのに、なんということを……』と、助手がセシリアを非難しかけたが、王城医師が『バカもん!』と助手を叱りつけた。

医師は燃えかすを指差して、厳しい声でこう言った。


『これは薬草ではないぞ。葉の形がよく似ているが、毒性のある別の植物だ。セシリア様が気づいて燃やしてくださらなければ、一大事になるところじゃったぞ!』


王城医師と助手に、深々と頭を下げられ感謝されてしまったセシリアは、悪事の才能がないことを悲嘆していた。

失敗の中で唯一、よかったことを挙げるとするなら、それら二件の人助けをクロードに見られていなかったことであろうか。

彼は騎士団長としての任務で、五日前から王城を留守にしている。

他貴族の領内で起こった内乱の制圧に、遠征に出ている話は、ツルリーが調べて教えてくれた。


クロードが長期不在のこの期間は、彼に嫌われることを恐れずに悪事を働くチャンスであったのに、立て続けに失敗し、セシリアは肩を落としていた。

けれども、セシリアと侍女たちは、まだ諦めていない。