それからまた、ひと月が過ぎた。この日、私達は2人で、おかあさんの四十九日の法要を営んだ。


遡ることその2週間前、私の携帯に知らない番号からの着信があった。商売柄、そういうこともたまにあるので、私は恐る恐る通話ボタンを押した。


すると相手は元夫で、少し前から近所のコンビニでバイトを始め、そうなると携帯くらい持たないと、いろいろ不便だからということで、しばらくぶりに契約したのだと言う。


「君からのお金で買ったんだし、なんて言っても僕は、執行猶予の身だから、君には連絡先を報告しないといけないと思ったから。」


なんて真面目な声で言う元夫から、この日のことを聞き出し、遠慮する元夫を押し切って、参列させてもらった。


お経をあげて下さったお坊さんは、私達を夫婦と思ったらしく、私に「奥さん」と呼び掛けるの見て、なんとも済まなそうな表情になる元夫が、内心おかしくて仕方なかった。


埋葬が終わり、墓前で手を合わせた私達は、様々な思いを元夫のご両親に伝えると、合わせていた手を解いて、一礼した。そしてホッとしたように、私達は顔を見合わせる。


「ありがとう。お陰様で、母を無事、父の所へ、送ることが出来た。」


「よかったね。」


「遠い記憶だけど、ウチの両親、仲良かったから。今頃久しぶりに会えて喜んでるだろう。」


そう言いながら、少し遠くを見るような表情になる元夫の横で、私は複雑な思いを抱いてしまう。


「行こう、お礼にお昼ご馳走させて欲しい。初めてのバイト代が出たから。と言ってもせいぜいファミレスくらいしか行けないけど・・・。」


恥ずかしそうに言う元夫に、私は笑顔で答える。


「ファミレス大歓迎。じゃ、行こう!」


そんな私に、ホッとしたような表情になる元夫。私達は肩を並べて歩き出した。


歩いて10分程で、目指すファミレスに着く。昼時で混んでいるかと思ったけど、すんなり席に案内された私達は、おかあさんの思い出や他愛のない話をしながら、ランチを楽しんだ。


「それにしても、君とこうやって、食事を共にする時が来るなんて、正直思ってもみなかったな。」


そして、食後のドリンクのコーヒ-を口にしながら、元夫がしみじみとした口調で言う。


「私達って、周りからどう見えてるのかな?」


そんなことを言う私が、飲んでるのはオレンジジュース。


「実は僕も、今同じことを考えてた。」


そう言って、私達は顔を見合わせたけど、胸の中に浮かんだその答えを、お互いに口にすることはなかった。