『知花ちゃんさー!
徒競走のタイム何秒だった?』
海が授業終わりに、私が一人で教室へと戻ろうとしたらついてきて話しかけてきた。
まぁ、友達だから、おかしくないし、当たり前なんだけど…
“何故か嬉しい”
その言葉が私の薄汚れた心にこだまする。
響き渡って中々消えてくれない。
『おーい!聞いてるー?知花ちゃーん?』
『わっ!?』
気付いたら海が心配そうな顔をして私の顔を覗き混んで手を振っていた。
『どーかした?そんなに難しそうなかおしてー』
『別に』
私はそう言って、何となく気まずいと言うか、気恥ずかしくなったので、海と反対の方を見る。
『あ、桜…綺麗…』
別に何となく気まずいからって、話を反らしたかった訳じゃないけど、ふと校庭の隅に咲く、何本かの桜の木が目にとまる。
『なーに?知花ちゃんって桜、好きなの?』
『まぁ、名前に花が入ってる位だし、好きだよ』
私は笑顔でそう言った。