嬉しそうにはしゃぐ汐里に、愛想笑いをしておく。

私にとっては知り合いなものだから、何と返事をしたら良いか分からない。

非常に複雑な心境になる。

少し思い悩んでいると、汐里が騒がしくなった。



「ちょっ、みさお! みさお!」

「もう、何──」

「どうも、みさおさん」



肩に誰かの手がのせられ、小さく悲鳴が上がる。

恐る恐る振り返ると、そこには案の定、吾妻さんの姿が。



「これから、ランチですか?」

「あ、はぁ……」



先程、汐里に向けていた愛想笑いを、今度は吾妻さんに向ける。

私の反応に、一瞬だけ困り顔を見せた吾妻さんは、直ぐに微笑んでみせた。

その気遣いに、心が痛む。



「突然、話し掛けて迷惑だったね。ごめん、ごめん」

「あ、いえ、そういうことじゃ……」

「俺にまで、そんなに気ぃ遣わなくていいよ。じゃ、またね」



吾妻さんは手を振って、その場を去って行った。

──気を遣ってくれたのは、吾妻さんの方なのに。

申し訳なさから、その背中を目で追ってしまう。



「ちょっと、ちょっとぉ?」



汐里が、私を怪しげに見た。