「馬鹿にしてます?」

「や! してない! ごめん、ごめん。みさおさんって、本当に時々、面白い発言するよね! 壮の店とかでも」



吾妻さんは涙を自分の指で拭いながら、息を整える。



「ちなみに、会うのはいつ?」

「明日の夜です」

「嘘! 明日?!」

「はい」

「うーん。これまた、急だなぁ。俺、教えるのは、あんまり得意じゃないんだよな。そうだなぁ……」



吾妻さんが、思った以上に悩んでいる。

そういえば、一番初めのインテーク面接だか何だかのときに、吾妻さんの説明の中にあった吾妻さんの主とする心理療法。

『相談者自身の解決していく力を信じること』

『俺がアドバイスをすると言うより──』

だからか。

私、今、教えていただけませんか、なんて言ってしまった。



「あの……」

「だいたい普段は、どんな感じ? 前回、夜ご飯行ったときとかでもいいよ」



何を言うか決めてもいないくせに、私が出した声と、吾妻さんの言葉が重なる。



「俺も状況を把握したいので、出来るだけ詳しく教えてもらえると、有難いんだけど」