「完全にオフ、ってことはさ。彼は、みさおさんの前ではリラックスしてる状態ってことだと、俺は思ってるんだけど……どう思う?」



それを言われた私はというと、体が一瞬にして強張る。

動揺している。

──話題が無くて、気まずくて、居心地が悪いと思っていたのは、私だけだった?

ユウくんは会話が無くても、それで良かったのなら、また私が1人で空回りしていたということになる。

あくまで、吾妻さんの憶測に過ぎないのだから、実際にユウくんがどうなのか、気になるところではあるけれど。



「リラックス……してくれてるんですかね……」

「それは、みさおさんだけが、確かめられることだよ」



吾妻さんは、くすりと笑う。

その吾妻さんの表情を見ているだけなのに、心が穏やかになる。

でも、そうは言っても、やっぱり少しずつでも良いから、言葉を交わしていきたい。

だって、私たちは付き合い始めて、まだまだ間もない。

長年の付き合いなら、流れる静かな時を2人で過ごすのも良いかもしれない。

だけど、趣味や好きな食べ物、嫌いな食べ物に誕生日、それどころか彼の性格の本質もあやふやなままで。

お互いに何も知らない「初めまして」の状態のままじゃ、いけないと思うから。



「……分かりました。その辺りも、確かめられるくらいになります」

「うん」

「でも! まずは私、彼のこと何一つ知らないので、話しながら知っていくことが大事だと思っていて……」

「何一つ……?」

「はい。だから、お話の仕方を、教えていただけませんか」



私が意気込んで言ったのに、吾妻さんは「え」と声を漏らす。

そして、くつくつと笑い出した。