「ちなみに……。先に一つだけ、質問させてもらってもいい?」



おそらく私の記録などが記されているファイルを準備すると、その手を止めて、改めて私に向き直る。



「はい。何でしょう?」

「あれから例の女の子とは、特に何も無い?」



『例の女の子』ユウくんに好意を寄せていて、私を敵視している子。

ユウくんとは同じ部署のため、向こうで何かが起きていても、察することは出来ない。

少なくとも、私とはあれから、一度も関わり合いは無い。



「はい。今のところ、会うこともありません」



私が答えた後、吾妻さんは安堵したようで頷く。



「そっか。それなら良かった。では、前回話してもらった内容から、何か変化はありましたか?」

「はい。聞いてください……!」

「お、何。急に元気になって」



吾妻さんは、少し引き気味だ。

失礼な、と私の中で多少は苛立ちを感じたが、それよりも聞いて欲しかった。

だから、つい前のめりにもなる。



「明日、夜ご飯の約束をしました。それも、私の方から」

「すごいじゃん。素直に言えたんだ?」

「何とか……ですけど」

「それでも、言えたってことが成果だ。もう変化が現れるのは、みさおさんの意思の強さだと思うよ」

「……そうなんでしょうか」

「そうさ」

「ありがとうございます……」



この年齢になって、こんなに褒められることってない。

とても、こそばゆい。



「その中で浮き彫りになったこともあって……」

「浮き彫りになったこと?」