再びデスクへ戻った私は、カウンセリングの時間に間に合わせるために、急いで仕事に取り掛かる。

これ程、忙しくしている最中にも、別のことで頭の中が騒がしい。

先ほどまでの彼との会話を、ずっと頭の中で反芻している。

──今、割と良い感じで話せたんじゃないですか?

自分で自分に問い掛ける。

──悪くない。

──ですよね!

私の中の私たちが、心の会議室で報告会を行っている様子が浮かぶ。

──これは、ある意味では、目標達成なんじゃないですか? 『素直になりたい』って言う……。

──甘い! 今は、話す要件があったから、仕方がなく話せただけ! 明日の2人になった様子を、思い浮かべてごらんなさいな! 話題も無く、ただ無言で過ぎていく空間……。ああ、怖いったらない!

この子だ。

私を素直にさせないのは、きっとこの子が怯えているからだ。

自分の内側も見えてきた。

そう思ったところで突然スイッチが入れ替わり、妙に冷静になった。



「何、今の…………」



私は一体、何が見えていたんだろう。

いろんなタイプの私が、何人も居た。

こわ……何あれ。

眉間を押さえる。

疲れているのかもしれない。

やっぱり諦めずに、早く仕事に切りを付けて、ちゃんと吾妻さんのカウンセリングに行こう。

そして、ちゃんとすっきりして帰ろう。

せっかく「良かった」と思える出来事があったのだから。