「汐里と居られないなら、やっぱり静かに黙々と観光出来るところがいいかな……」
「静かに……例えば?」
「うーん。信州の方なんか、どう?」
そうだ、例えば、長野とか。
「お蕎麦を味わってみたいし、ダムなんか黙々と探索しても面白いかもしれない」などと言った理由を話す。
それに、汐里は頷いた。
「なるほど、なるほど。そういうのも悪くないね。早速、調べて、提案してみる。ありがとう」
話が一段落し、おろしハンバーグを頬張ることに集中する。
集中したかったけど、まだ先のどうなるかもわからないことに、頭が思いを馳せてしまう。
──社員旅行。そうか、もうそんな時期が来るんだ。
昨年の社員旅行のときは、まだユウくんとは付き合っていなかった。
あのときは、この私が男の人と付き合うなんて、思ってもみなかった。
いや、逃げているような今の状態で、正式にお付き合いしていると、果たして言えるんだろうか。
彼、ユウくんは初めから、至って真剣に気持ちを打ち明けてくれたのに。
私だけが、こんな状態なんて。