夢見つつ眠る。

「本か」とイデアル。

「そ、本」と長月遥。

穏やかな春の日差しだった。
長月遥はにっこりとして。

「本があるって落ち着くわね」と。
「だよな」とイデアル。

「で一番いいのが本に関する優れた評する本。
ある本の歴史とか、その本に関する社会の状況とか」と長月遥。

長月遥は本好きで、ケータイ小説から古典まで概ね読んでいるらしかった。なんでも家に数百冊の本があるとか。

「そうね。
たとえば本の中のそれら星が綺麗だということをどこかで知らなければ、知ることなどもなかった」と長月遥。

「閑話休題だが、四月十六日のフランス、パリのノートルダム寺院の火災だ」とイデアル。
「そうね。

世界の美しさを知らないということは、無関心そのものだと思うよ」

「いつまでもあるとは限らない、か」とイデアル。

「世界の美しさもそうでしょうね」
「世界は流転し、幾多の文明が生まれ、プラットフォームが生まれ、そして滅び消えていく」
「我々はそれに抗って(あらがって)いるだけなのよ」