花冷え。教室ではいつものような昼休みで四月だ。灰色の雲。寒さ。

「花冷えだなあ」とイデアル。
校庭の桜を見下ろした。

イデアルは、女子高生だ。

となりにいた長月遥が同意。

「三寒四温ですからね。
日本の春は大陸の高気圧の影響で、季節の差が広いのでしょう」

「日本は三寒四温で済んでるが、モンゴルあたりだと一年で最も恐ろしい季節は冬ではなく春の乾期らしいんだよ」とイデアル。

お弁当を広げる。

ツナサンドだ。

長月遥は紅白(こうはく)の梅干し弁当、卵焼き(たまごやき)とサラダがついている。


「そういえば、地衣類(ちいるい)の記録も進めないとな」

イデアルは本を手にとる。