[偉大なる西方王国の王の死]

旧家から引っ越してきたリンネは今でもアイスを食べるのが好きだった。

イデアル、長月遥、リンネの三名はあまりの暑さにアイスやシャーベットを買い込む。

夏なのだ。それは一生に一度だけしか訪れない夏の。

「はあ、あついな」
「だよね」

コンビニの外で。

リンネはふと思う。

「もしも予算を節約したらどうなる」
「答えは決まっている」とイデアル。

「予算を節約すれば緩やかな死が待っている。予算を使うにしても使わないにしても、選択肢は限られる。

いにしえのSF映画やファンタジー映画が与える感動を味わいながら不死ならぬ人は自身の死を待ち続ける。

だからこそ、いまはやさしさを止めてはいけない」
イデアルの結論はこころを冷やすようだった。
長月遥がいう。

「イデアルのそれはたぶん映画ロード·オブ·ザ·リングですよね。

偉大なる西方王国の王の死あたりかな」
リンネはふと古い映画を観たいと感じる。

少し日常と離れたところにある、夢見るやさしい物語がいいかもしれない。とリンネは感じた。