·鉱石。

リンネはぼんやりと土蔵のなかで見た図鑑の記憶を思いだしていた。旧家だ。

雲母や綺羅水晶。

そういえば、鉱石から名前をつけるなんてすてきとは謂わないかい。

どうだろうな。名は何も表さない、ともいうぞ。

リンネのなかの会話劇だ。
人間などはたいていは会話劇をしているものだとリンネは考えていた。

或いはこころとは舞台装置であり、肉体はそれを抑える制御装置かもしれなかった。

リンネは文庫本を読む。教室だ。クラスメイトの会話が聴こえる。
五月の空はタイムペイブメント。