·買い出し旅行。

イデアルと長月遥は休日に水守市の中央地帯の商店街を歩く。

駄菓子屋で菓子を選んで中央地区の公園で食べる。遠くに吉備山が見える。吉備山のお寺の鐘がかつては時刻を告げていたとか。

「遥はなにを選んだんだ?」
イデアルは質問をする。
「チョコレート最中(もなか)です」と長月遥。プラスチックの透明な包装袋を見せる。中身はチョコ色の最中だ。
「イデアルは?」
「パンケーキだな」
はちみつが入っていると説明。

駄菓子屋産業に必要なのは同業者の組合などといった「横のつながり」なのだ。つながりは、たとえば減価償却に耐えることが出来るからだ。

だから、たまにイデアルたちは駄菓子屋でお菓子を買っている。それは国内の産業構造の変化に対して、女子高生が出来るいたってささやかな手段といえた。

同時に買い出しとは地域や友人たちの意義や価値、あるいは異なる側面を再発見することといえたのだ。