翌日。ロッカーを開けると、ひらりと手紙が落ちてきた。

「……はあ」

毎日毎日いい加減にしつこい。私も三回目あたりから見なくなった。

とりあえず拾って、カバンの中にしまう。捨てる、なんて出来ないのは、やっぱりなんとなく後ろめたいからだ。

「おはよう、レイ」

そんな私に、いつもの声が挨拶してくる。

「……先生」

もういい加減に、この手紙と同じように慣れた自分が、若干恐ろしかったりもする。

「この時代に手紙ね。告白?」

「そんなものじゃないですよ」

私は手紙を先生に突きつける。

「恨みの手紙です」

「……見ていいの?」

どうぞ、と返すと、先生は封筒のシールを剥がして、読み始めた。壁にもたれて読む様は、とても恨みの手紙を読んでいるとは思えない。

「要するに、嫉妬されてるんだ?」

読み終わった先生は、確かにそう言った。

そう、嫉妬。純粋すぎる、嫉妬。

私だって、別に佐藤が特別好きなわけではない。でも、高校に入ってできた唯一の友人が佐藤だけなのだ。確かにこの手紙の言う通り、断ったくせにまだ隣にいるのは未練があるように見えるのかもしれないけど。

でも、今なら言える。佐藤への好きは確かにあるが、それは友人としてだ。先生への好きとは意味が違う。

「正直、どうしたらいいのわからなくて。ちょっとストレスだったりするんですけどね」

少しだけ苦笑しながら、手紙を再びカバンにしまう。

先生は少し悩んで、ふと無表情になってつぶやく。

「佐藤と関わるの、やめたらどうかな」

「えっ」

提示されたのは、あまりにもシンプルな解決策。私が一番先に考えて、一番先に諦めたもの。

確かに佐藤と関わるのをやめれば、この手紙もきっとこなくなる。だが、そうすれば佐藤とはもう二度と話せなくなる。

そう考えたときに、不覚にもそれが嫌だと感じる自分がいて、だから、諦めた。

「……ごめん、こういうのは、ずるいか」

「ずるい?」

「いや……なんでもない」

ふわっと何かをごまかすように先生は笑った。

「うーん、でも、そっか。確かにこれが毎日来るのは堪えるね」

「はい。どうしたらいいですかね……?」

先生は少し何かを考える様子を見せて、何か思いついたのか、ふと顔を上げる。

「……?」

私のことをあまりにまっすぐと見てくるので、私は思わず、こてんと首をかしげる。

「レイはその人にどこまで求めてるの?」

「どこまで?」

「謝ってほしい、とか、思ってるのかなって」

ああ、とこの時の私は何も知らないで、思いついた言葉をそのまま発していた。

「この手紙が、こなくなれば嬉しいですけど」