「勇太朗」

「……どーした」

「一緒に寝てもいい?」

「はっ!?」

「ね、最後の夜だもん。結局私のせいでコスモス祭り行けなかったし…」

「別にいいよ、コスモス祭りは…」

「えー、なんでそういう事言うの」

「だってコスモス祭りとか高校生男子からしたらつまんねー事以外何もねーよ」

「もー、わかってないなあ。まあいいや。隣にお布団敷くね」

「だから、なんで!」

「お願い、ね、一生のお願いです!」

「……今日だけだからな」


またしても、押せばいけた。

だけど、勇太朗は身体ごと私の反対を向こうとしたので、それに少し寂しさを感じたから、私はつい言ってしまった。


「勇太朗、手、繋いでもいい?」

「はあ!?」


こういう反応をされるのはわかっていたけれど、私だってこれを言うのに相当勇気を出した。
隣で眠りたいと言ったのもそうだ。


彼は勢いよく私に振り向いたので、タオルケットが捲れた。


「ね、お願い!勇太朗が手繋いでくれたら、私帰っても頑張れそうな気がする」

「はあ、俺もうお前ほんとやだ。もうまじでやだ」

「えー、なんで」

「うるせえ、だまれ」


勇太朗の温かくて大きな手に、私の手はがっしりと包まれた。

自分から言った事なのに、緊張と恥ずかしさで心臓が飛び跳ねているようで、勇太朗の手の温かさが手を通して伝わって、私の手の温度もどんどん上がっている気がした。


「ふ、勇太朗の手、大きい。小学生の頃と全然違うね」

「…当たり前だろ。俺だって変ったよ、いつまでも子どもじゃねーし」

「あ、それ昼間も言われた」


ショックだったなあ、と呟くと、勇太朗は握っていた私の手を引っ張った。


「男だよ、俺」

「し、知ってるよ」


声を振り絞って出すと、結構震えていて、でも、勇太朗から目を逸らせなかった。

はー、とため息をつきながら、勇太朗は私の手を握る力を緩めて、布団に横になった。


「…もー俺眠い。寝る」

「あ、うん。明日朝からバイトだもんね。おやすみ」


規則正しい寝息が聞こえて、彼が寝たとわかっても、私は繋いだ手を離さなかった。


だって勇太朗も、私の手を、ちゃんと繋いだままだったから。