親友の思わぬ気づかいにじわりと目頭が熱くなる。

ありがとう、姫奈。


「おいしかったよ、港さん」

「…それは良かった」

「だからねー、俺の渡すのなんか嫌になってきたけどねー、せっかくつくったし渡すね!」


そう言って突然多賀君は消えてしまった。

何が起きたのか分からずうろたえていると、
大きな紙袋を持った多賀君が走って降りてきた。

その時、


「あ」


きちんと履いていなかった彼の靴が片方脱げて、多賀君が躓く。
その拍子に紙袋から飛び出したのは、


マフィン、マシュマロ、ドーナツ、キャンディのように包まれたお菓子。

それから、チョコレート。

パラパラと空に舞うカラフルなお菓子たちはなんだかすごく綺麗で。

ほぼ空になった紙袋を抱えた多賀君はバツが悪そうに頭を掻いて、
それから真っ直ぐに私を見つめた。


「これ全部、港さんにあげる!
甘いもの好きだって言ってたから俺が作った!」

「え、なんで…」

「だって今日バレンタインデーでしょ?
好きな人に好きなものあげる日でしょ?」

そう言って、真っ赤になって笑った。