冷たい風がスカートから出た脚に突き刺さる。
私は1人で下駄箱へ向かっていた。
姫奈に一緒に帰ろうと誘ったけど、「命にかけた任務があるから先帰ってて!」とすごい剣幕で言われた。命にかけた任務ってなんだよ。
寒い。さびしい。失恋した。
肩を落として玄関を出た時だった。
「みーなーーとーーーさーーーーーん!!!!!!」
馬鹿でかい声が、上から降ってきた。
思わず上を見上げると、そこにいたのはもちろん多賀君で。
教室の窓から身を乗り出して、私に手を振っていた。
周りにちらほらといた生徒たちがなんだなんだとざわついている。
「…な、何してるの多賀君」
「今日バレンタインでしょー?」
「…そうだね」
「港さんにお礼言わなきゃって思って!!」
「待って、なんのこと…」
「チョコ!!ありがとう!!美味しかった!!!」
「え?」
私のチョコは、姫奈が全部食べてしまったはず。
どうして?
「姫奈ちゃんがね!くれた!!
私がほとんど食べちゃったけどちょっとだけ残しといたから死ぬほど感謝して食えって!!!」
"命をかけた任務がある"
ーー姫奈。
このことだったのか。