「…あれ?
姫奈、多賀君どこに行ったか知らない?」
「さあ…私アンタほど多賀のこと見てないし分かんない」
至極もっともなことを言う姫奈にありがとう、と言ってから多賀君を探しにいく。
見つけたら言おうと思う。
大げさなくらいに音を立てる心臓を押さえつつ、多賀君を探した。
中庭を通りかかった時だった。
ぴょこんと跳ねた見覚えのあるつむじ、
多賀君だ。
こんなに遠くから、しかも後ろ姿でも分かってしまうなんて私なかなか重症だな、なんて思いながら近づいていく。
「…あれ?」
身体に隠れて見えなかったけど、多賀君の前に誰かがいる。
……女の子だ。
少し斜めうしろに移動して、目を凝らす。
黒髪の長い髪の、小さめの女の子だった。
多賀君はその女の子と何か喋った後、照れくさそうに笑った。
「…え、」
女の子が差し出したものを見て、
思わず息をのんだ。
赤い包装紙で黒っぽいリボンが付けられた箱、
あれはきっとチョコレート。