「そんな話、聞いたら誰でもわかるよ」
「そっか。そうだね」

すがすがしく笑うから、またもや胸が痛くなる。

「うまくいきそうなの?」

尋ねると、ハローくんの表情が曇った。

「ごめんね。変なこと言った」
「ううん、変なことではないけど」
「うん」
「今も好きかと言うと、そのような、そうでもないような、そんなような」
「えっ? どういう意味?」

柚月はわざと茶化しながら訊く。そうでもしないと顔が暗くなってしまう。

「うーん。俺が好きだと彼女が困るから、好きでいてはいけないんだ。好きだって気持ちは伝わってはいけない」
「どうして気持ちが伝わっちゃいけないの?」

一度、口を閉ざす。それから
「俺が好きなままだと朝ちゃんが怖がるから」
「え? 怖がる?」
「うん。だからね、もう諦めないといけないんだ、本当に」
「それって、先輩はハローくんの気持ち知ってるってこと?」
「そういうこと。振られてるんだ」
「……」

だからねと続ける。
「忘れようと思って最近は近づかないようにしてたんだ。
だからゆづちゃんに文化祭に誘われたときどうしようかと思った。
会えるならやっぱり会いたいし。
でも会いに行くのは迷惑だって今は理解してるし。ただ一度見てみたかったんだ。
彼女の過ごしてる学校っていうところ。
彼女がどんな景色をいつも見てるのか見てみたかった」

静かだけど情熱を秘めたような瞳にひきこまれて、柚月は何も言えずただ見つめた。