言いかけると扉がノックされた。
返事をする間もなく「宏くん、久しぶり」と美織が顔を覗かせた。

「ああ、美織ちゃん。久しぶり」
「ママから遊びに来たって聞いて。混ぜて」

美織が宏くんの隣に座ると、緊張していた空気が明るくなった。
積もる話や須長くんに聞きたいことがあるようで、結局、須長くんが帰るまで美織は部屋にいて、駅に送るときも一緒に行くと着いて来た。
「んじゃ、またね」と地下鉄の階段を降り須長くんが見えなくなるまで見送る。

美織は「宏くん、かっこよくなってたね」と柚月を見る。

「そうかもね」
「モテるでしょ?」
「うん。たぶん」
「そっかぁ」

美織がどこかしゅんとしたように見え、不思議に感じていると柚月の携帯が鳴った。

ハローくんからのメールで、夕日が海に溶け込んだ綺麗な写真が添付されていた。
ここはあそこの公園だろうと返信する。

『今、公園にいるの?』
『うん、いるよ』

「美織、ごめん。先に帰ってて。寄るところあるから」
「え、私も付き合うよ」
それを断り、「ううん。一人で大丈夫。すぐに帰るから」と駆け足で向かった。