須長くんの硬くなっていた表情が崩れていく。
「え、何が?」
「入学式のとき、すれ違ったでしょ。あのとき、自然に話しかけてくれたこと、嬉しかったから」
「突然なんで……そんな前のこと」
「すごく嬉しかったこと、さっき思い出したから」
柚月が須長くんのママに感じていた恐怖は、彼に対してもあった。彼は何も言わなかったけど、心の中ではそう思っているのではないかって。
だけど再会した彼は、時間を感じさせないくらい自然な笑顔で話しかけてくれた。
心が許された感覚で満たされると感謝に変わっていく。
その思いをあのときは伝えられなかった。
「急にそういうこと言うの、ずるいんだけど」と、須長くんは照れたように視線を逸らした。
柚月は言われた意味がわからずきょとんとしているけど、須長くんは覚悟を決めたように居直り、
「あのさ、俺、柚月に言いたいことがあるんだけど」
「うん」
「俺さ」