テーブルの前に向かい合わせて座る。ママが入れてくれた紅茶を手にしてから
「そういえばさっき、宏くんのママに会ったよ」
「え、嘘」
「駅前で募金活動してた」
「募金。ああ」
「ああいう活動よくしてるの?」
「……うん。みたい。俺も昔は手伝わされたから」
「そっか」
「でも部活とか勉強とか忙しくなってから、行かなくなったけど」
「……ブログ、この前見たよ。おばさんの」
「ブログ? ああやってるみたいだね。俺は見てないけど」
「瑞樹くんの誕生日祝いしたんだね」
「……ああそれか。二十歳まではやりたいんだってさ。食べきれないのに大きいケーキ買ってたよ」
「そっか」
「まあ、いいよ。その話は」

続けたくないのが柚月に伝わり、無言になった。
いつもなら楽しく瑞樹くんの思い出話が出来るのに、この話はしたくないんだ。
須長くんも黙り込むから、不機嫌にもとれて気になってしまう。
柚月は駅前での出来事を思い返し、それから切り出した。
「あのさ、宏くん」
「ん?」
「ありがとう」