聞きたいことは沢山あるはずなのに、手を繋ぐという初めての経験に柚月の思考が追い付かない。

そんな柚月と対照的に、ハローくんは前を向いたままひどく冷たい声で
「あいつ、嫌な奴?」
「え?」
「ゆづちゃん、困ってたから。嫌な奴なら、助けるよ」
「そんなことしなくていいよ。嫌な人じゃないから」
「本当に?」
「うん、大丈夫」
「俺、偉そうな奴嫌いなんだ。あの人、たぶんそういうタイプでしょ」

柚月は淡々と話すハローくんがいつもと違って怖かった。手が緩み離れる。

「ハローくん、なんか怖いよ」
冗談のように言うと、憑依が解けたかのようにハローくんは柚月を見て微笑んだ。

「ならいいや」
「えっと……そういえば、どうしてここにいるの?」
「うん。ちょっと用事があって」
「あ、そうなんだ」
「ゆづちゃんは?」
「友達が遊びに来るから、駅までお迎えに来たの」
「あ、じゃあ余計なことしたね」
「ううん。さっき実は急いでたから声をかけてもらえて助かったよ。ありがとう。待ち合わせは近くだから、大丈夫」
と取り繕った。

「うん、わかった」

そこで「柚月」と呼ばれた。須長くんだ。