「嘘じゃないからね」
「うん。そんな気がする」
「え?」
「美織ちゃん、嘘は言わないと思う」

そう言って立ち上がった。

「え、病室行くの?」
「ううん。帰るよ」
「そう」
あまりにもあっさりしているので拍子抜けした。
「あ、ここに来たこともゆづちゃんには言わないでね」
と笑って釘をさす。

もしかしたら、もう来ないのではないか。
そんな気がすると、あんなに嫌だったのに、どうしてか美織は悪いことをしたような気分にもなる。

それに柚月はハローくんのことを好きだとも言っていた。須長くんに幸せになってもらいたいはずなのに、思わず

「本当に言わなくていいの?」
迷わず頷くから、その気持ちに変わりはないようだ。
さっきまで悪態ついていたくせに、変なの。

そこで須長くんが通りがかると、二人に気づき声をかけた。

「あれ? 美織ちゃんと……」
名前も言いたくないようで、じっとハローくんを睨む。彼も同じように須長くんを見返した。

「あ、来てたんだ、宏くん。私も今から行こうと思ってたの。そしたら、この人も来てたからちょっと話してたんだ」
と美織が取り繕って説明すると、へぇと相槌を打つ程度で疑う様子はなく
「三波、ちょっといいか」
とハローくんを誘った。