「なんか俺が泣かしたみたいだから、あっちで泣いておいで」
と向こうを指さす。
「あなたが泣かしたようなもんでしょ」
ひどい言い草だ。何も関係ないと思っていたけど、ふと前に言われたことを思い出した。
「あのさ、俺とゆづちゃんが仲良くしてほしくないって言ってたのはさ、須長と付き合ってほしいからっていうのもあったの?」
躊躇ってから
「うん、それもあったよ」
と白状する。
「へえ。そんなに付き合ってほしいんだ。自分が好きなのに」
「だって私のことなんか眼中ないの知ってるもん。他の人と付き合うなら、お姉ちゃんのほうがいい」
「ふうん。全然共感できねー」
「求めてない」
そう言いながら、隣にいる美織も自分も実は変わりないことに気がつく。
今だって、告白の現場を見て苛立ちを感じたはずなのに、美織に連れて来られたとはいえ逃げだしてきたようなものだとも思う。
「バカ」
呟くと自分に言われたと思ったのか美織は
「知ってる。わかってるよ」
と膝を抱えた。
「いや、俺が」
「は?」
「好きなら好きで素直になれって人に言うのは簡単だなって思ってただけ」