散々な目にあったとハローくんは柚月の病院に向かいながら思っていた。
陽高の鶴見を倒したのはいいものの、今度はそれを聞いた別学年の奴らに絡まれる羽目になった。
下校時に襲われたのだが、今日は週明けにも退院が出来るかもしれないと言った柚月に最後に渡したいものがあった。
それを抱えながら喧嘩をしたものだから、いつもより少し苦戦した。
唇を少し切ってしまい、これを見たらまた嫌な顔をされるような気がして溜め息を吐いた。
なんでこんなこと、いちいち気にしてるんだろう。
喧嘩をするとかしないとかそんなの自分の自由じゃんとも思えるのに。
昔なら、好きな子に好きというのはとても簡単だった。
力ずくでも付き合おうとしたこともあったのに、今はそんなこと思えないのもなんだか笑えてくる。
何を考えていても、何も始まることはない。
プレゼントを持った手に自然と力がこめられた。
柚月の病室の前に着くと、美織が突っ立ている。
「何してんの?」
後ろから声をかけると、わっと小声で驚きすぐシッと指を立てた。
わずかに開いていた隙間から覗くと、須長くんが座っているのが見えた。
面白くない。
このまま開けてやろうかと扉に手をかけると「ダメ」と美織が阻止した。
美織に視線をやると、中から
「そんな奴と一緒にいても幸せになれないよ。辛いだけだよ」
「そうだね。考えてみるね。ありがとう、心配してくれて」
二人の会話が聞こえた。