「こんにちは。体調いかがですか?」
と看護師が入ってきて、体調の確認と点滴をつけていった。今日は夜勤だと言う。
微熱がまだあったようなので、長居はしないほうが良さそうだ。
窓の外を眺めていると曇り空の隙間から光が溢れ、町の一部を照らしている。
「やっぱりずっと病室にいると、疲れちゃうな」
柚月は水のペットボトルの蓋をあけ飲み込む。
「寝れるの羨ましい気もするけどね」
「元気なときはそう思うよね。ああ、早く学校に行きたいなー」
「学校、本当に好きだよね。全然わかんない」
「うん。勉強したいわけじゃないけど、湖夏とか、友達に会えるからかな」
湖夏の顔を思い浮かべると、柚月はふっと心が柔らかくなる。
花に目を向けると、やっぱり不安は預けていいよと言われているような優しさを感じる。
そして穏やかな空気の中にいれることに、自然と感謝した。
今なら訊けるかもしれない、言えるかもしれない。
そんな気がして尋ねた。
「ハローくんにね、ずっと訊きたいことがあったんだけど」
「何、改まって、ものすごく怖いけど」
ふざけて受け止める。
「あのね、ハローくんの知ってる人で、脳死して心臓を提供した人っている?」